代表メッセージ
「好き」を積み重ねるということ
「好きなことをコツコツ積み重ねていく。つい気になって触ってしまうこと。気づいたら時間を忘れてしまうこと。そういうものを持っている人は強いと思うんです。——そういう場所を作っていきたい」。芝原工業3代目・芝原利幸氏が語る、ものづくりの根っこにある想いとは。
——ものづくりの原点
「好き」を積み重ねられる場所
幼いころから、電化製品をドライバーでバラしてしまうような子どもでした。どんなふうに作られているのか気になってしまうんです。例えば小学校の自己紹介カードでも、ただ絵を描くだけでは物足りなくて、折って引っ張ると文字がスライドして出てくる仕掛けを仕込んだりしていました。大人になった今でも、カメラを見ると「このレンズを分解して別の部品を足したらどんな写真が撮れるだろう」なんて考えてしまいます。
そんなふうに、何かに夢中になる感覚を自分自身が知っていたからだと思います。小学生のころから、ずっと引っかかっていたことがありました。クラスでは、頭の良い子や足の速い子が注目され、中心にいることが多い。その一方で、工作や美術の時間になると、まるで別人のように目を輝かせる子がいるんです。普段は目立たないのに、その瞬間だけは誰も追いつけないほどの集中力で、試行錯誤を繰り返している。その姿を見るたびに、「もっと目を向けられても良いのに」と感じていました。
成績や運動能力のように、見えやすい形で評価される力は確かに強い。でも、どんな分野にも没頭できる人はいて。自分の好きなことに取り組み続けたり、試したりできる人って、気づいたらものすごく深いところまで行ってるんですよね。
——芝原工業の軸
没頭から熟達へ。熟達から信用へ。

社訓である「信用を重(じゅう)」には、「信用を重ねる」「重要である」「重(主)である」という3つの意味があります。一つ一つの積み重ねの先に信用があり、その信用を中心に置く——それが、芝原工業の変わらない軸です。
芝原工業には、プラモデルを作り始めると止まらない人もいれば、料理の手順を自分なりに工夫したくなる人もいます。編み方を変えたらどうなるか試したくなる人もいる。
共通しているのは、「気になると放っておけない」ということです。
一度やり始めると、納得いくまで手を動かしてしまう。うまくいかなければ別のやり方を試してみる。そんな積み重ねが、少しずつ仕事で信頼に応えているという実感につながっていくのかもしれません。
板金の曲げや溶接など、複数の工程がバトンをつないで一つの製品を完成させていくのですが、ロボットや機械では代替できない工程も多く、依頼ごとに求められるものが異なるため、正解がないところが難しくもあり面白いところです。例えば板厚「1ミリ」と指定された材料でも、実際に測ると0.9何ミリだったりする。しかも毎回微妙に違う。鉄といっても炭素など複数の成分が混ざり合っていて、その割合で硬さや曲がり方が変わるんです。なので前回うまくいった設定を入れても、同じように曲がるとは限らないのが難しくもあり面白いです。
熟達した職人は、材料を手に取った感覚や機械の動きから「あと1ミリだな」など読みを働かせ、一発で合わせていく。その感覚は、何度も試して、失敗して、また試すことでしか身につかないものだと思います。図面の線をどう形にするか——うまくいったり失敗したり、数々の経験の積み重ねを頼りに、その都度考えて、挑戦することを繰り返しています。
この姿勢の根底には、「熟達」という考えがあります。一人一人が身につけた技術が重なり合い、ひとつの製品になる。その過程を通じて視野が広がり、仕事は単なる作業ではなくなっていくという考えです。熟達を目指して日々試行錯誤を繰り返し、その先で自分だけの技術をそれぞれが獲得していけると、さらに面白いものづくりにつながると思います。
——芝原工業というチーム
会社は人でできている
「会社は人でできている」という思いが根っこにあります。社員一人一人が自分自身の可能性を育てていく。その結果、会社も自然と成長し、可能性が広がっていく。だからこそ「どうすれば人が試し続けられる環境を作れるか」を、ずっと考えています。
芝原工業の現場の話をするとき、私はよく厨房を思い浮かべます。野菜を洗う人、切る人、煮る人、焼く人、味見する人——それぞれが自分の工程を担いながら、一つの料理を完成させていく。板金も同じで、切断、曲げ、溶接…と数々の工程がつながり、最終的に一つの製品になります。厨房で野菜を切る人が「いつもより少し大きく切ってしまった」と気づいたら、次の工程の人に伝える。それだけで全体がうまく回る。大切なのはマニュアル通りに動くことではなく「良いものをつくる」というゴールを全員が共有して、お互いに情報をつなぎ合っていくことです。
自ら考えて動いてみる。失敗も成功も経験する。そうやって成長を積み重ねていくことが理想ですが、常に強く自分を律して前のめりに挑戦することは意外と難しい。私自身もそうです。うまくいかない経験をすれば自信も失うし、周りの評価が気になって挑戦をためらってしまうこともあると思います。だからこそ私たちは、個人の意思や努力に委ねるのではなく、安心して挑戦できる「環境と仕組み」で支えることを大切にしています。例えば、役職者だけが持っていた情報を全社員にも見える化し、自分で情報を取りに行き、考えて動ける環境をつくる。こうした小さな構造の積み重ねが「自分で見て、考える」というきっかけになると思っています。
ものづくりの現場では、良い結果も悪い結果も形として現れます。思い通りにいかないことも多々ありますが、それは決してネガティブな失敗ではないんです。一丸となって「良いものをつくる」というゴールに進み続ける。次にもっと良いものをつくる方法を思考する。それぞれの工程で試したことを持ち寄りながら、少しずつ良い形を探していく。そうすることで、一人一人の力も、チームとしても強く育てていきたいです。
また、一つの技術を深く極める道もあれば「板金技術×採用」「現場経験×企画」のように、複数のスキルを掛け合わせて自分だけの強みを見つける道もあると思います。大切なのは考えることや行動を止めず、探求し続けること。今もまだ途中です。行動の積み重ねによって、その人なりの強みが少しずつ育まれていくんだと思います。
——これから目指していきたいこと
試行錯誤をやめない場所

これからAIやロボットによる自動化が進めば、仕事の意味合いは「ただお金を稼ぐための労働」から、「自分の特技に没頭して、成長を楽しむ場」に変わっていくと思っています。ですが、純粋な「好き」から生まれる没頭や、職人ならではの感覚、泥臭く積み上げてきた経験などは、まだ人にしか積み重ねられない部分であり続けると思うんです。そうやって好きなことに没頭し、時間をかけて経験を積み上げていく。それがやがて信用につながっていく。この価値は、どんな時代になっても変わらないのではないでしょうか。
だからこそ芝原工業は、長く試行錯誤を続けられる場所でありたいです。私たち自身もまだ会社づくりの途中です。どうすればもっと挑戦しやすくなるのか、技術や経験を次につなげられるのか。現場で試し、意見を聞きながら少しずつ形を変え続けています。
ここで培った技術や経験を武器に社内で新しいことに挑戦しても良いし、いつか外の世界へ飛び出していっても良い。「芝原工業で積み重ねた時間」が、色々な場所で役に立ってくれたら嬉しいです。
未経験でもまったく構いません。必要なのは資格や経験ではなく、「どうなっているんだろう」と気になったり、「一回やってみよう」と手を動かしたくなったりすることです。
同じものに何度でも向き合える。少しの違いを面白がれる。答えが出るまで考え続けてしまう。そんな人と、一緒に試行錯誤を重ねていけたら面白いですね。