工場長インタビュー

10年かけて一人前になる、奥深い金属加工の世界

與五澤 祐一

製造部 工場長

——ものづくりへの原体験

ゴミの段ボールが、「つくること」の喜びを教えてくれた

始まりは段ボールかもしれません。実家はいちご農家で、苗の梱包用の段ボールが山ほどあったんです。梱包材を打ち抜いたときに出る、ただの四角い板。それをテープでつなぎ合わせて、いろんな形を作っていました。最初はただの箱でしたが、だんだん凝り始めて、最終的には自動車や家の形を作り上げたりしていました。

単なるゴミでも、組み合わせればいくらでも形を生み出せる。一つ一つはただのパーツでも、組み合わせ次第で無限に形が作れる感覚が、とにかく面白かったんです。

プラモデルもやってみましたが、どこか物足りないんですよね。それよりも木を切って釘を打って、秘密基地を作る方が楽しかったんです。

兄の背中を追っていろんなものを作るうちに、「自分の手で作っている」と実感できるものづくりが好きになっていきました。

絵を描くのも好きで、町内のコンクールにはよく入選していました。父もものづくりが好きで、上手な作品ができあがると褒めてくれたし、ものづくりを楽しむ様子を喜んでくれました。美術館にもよく連れて行ってもらいました。自分でも納得できるものが作れたときに、周りから「すごいね」と言ってもらえることが純粋に嬉しかった。その気持ちは、子どものころから今も変わりません。

——入社のきっかけ

直感で決めた芝原工業。「頭より、手と体を動かしたい」

大学は電気電子情報工学科に進んだのですが、回路図と向き合う日々は正直あまりハマりませんでした(笑)。研究室をどうするか迷っていたとき、ある部屋をふらっと覗いたんです。すると、ど真ん中に大きな機械がドーンと置いてあって、みんながわいわい手を動かしている。その光景を見た瞬間、「あ、ここだ」と思いました。

その研究室で始めたのは、超音波の振動で金属同士を接合する研究です。それまで溶接に興味があったわけじゃないのに、気づけばのめり込んでいました。自分で旋盤やフライス盤という機材を操り、装置を作り上げていく。この感覚が面白かったんだと思います。

就職活動では製造業しか受けませんでした。大手企業の工場見学もしましたが、何かが違うと感じていました。もちろん、安定して同じ品質を作り続けることは価値のある仕事です。ただ自分は、試行錯誤しながら手を動かして、作り方そのものを考えていくことに面白さを感じるタイプだったんだと思います。自分の感覚が入り込む余地があるものづくりをしたかった。

そんなときに出会ったのが、芝原工業でした。面接に行くと、会長室でいきなりフランクな会話が始まりました。「これ、面接いつ始まるんだろう」と思っていたら、もう始まっていた(笑)。肩肘張っていない感じも良かったのかもしれません。
その後「工場見ていく?」と案内してもらった現場は、それまで見てきた工場とはまるで違っていました。多品種少量で、一つ一つを職人が手をかけて作る、ほとんどハンドメイドに近いものづくり。「こういう世界もあるんだ」と分かったとき、「ここでやってみたい」という直感が働きました。

しかもこの仕事は、ただ手先が器用であれば良いというものでもありません。職人の腕の差がそのまま製品の精度に直結します。溶接ひとつとっても、繊細な感覚と深い技術がなければお客さんが求める品質には届かない。力の加え方、体の使い方、その微妙な違いまでが仕上がりに出ます。それくらい高度で難しいものです。「上手に作ってみんなを驚かせたい」という気持ちで、もっと深く試して行ける場所だと思ったんです。

——心が動いたこと

経験が人を育て、個がチームを強くする

入社してしばらくは、「個人戦」の感覚でした。自分が良いものを作れたら、それで満足していたんです。ところが、任される製品の難易度や規模が上がるにつれて、一人ではどうにもならない。各工程がつながって初めて良い製品になる。その中で、個人の上達だけじゃ足りないんだなと思うようになりました。

とはいえ、今でも自分の仕事に集中しすぎてしまうことはあります。現場を見ながらチーム全体のことも考える。その難しさは、立場が変わった今の方が感じているかもしれません。

失敗についての考え方も、そのころに変わりました。入社数年目、チームリーダーが一週間不在になったときに、自分が代わりを務めることになりました。背伸びして頑張ったんですが、実力がまだ伴っていなくて、製品を一つダメにしてしまったんです。叱られると覚悟して待っていたら、復帰したリーダーから逆に褒められた。「挑戦した結果のミスは、ウェルカムだ」と。こういう風潮が、芝原工業にはあります。あのとき、自分自身が「失敗しながら覚えて良いんだ」と思えた感覚は、今もかなり残っています。

現在は現場をまとめる立場ですが、人を育てることの難しさと面白さを日々実感しています。昨日できなかったことが今日できるようになる。その積み重ねが、人の成長につながると思うんです。だからこそ、担当工程だけでなく、前後工程を含めた知識や視野を広げられる環境を作りたい。

若手には体力があり、ベテランには繊細な技術がある。全てを一人でこなせる人はいません。それぞれの強みがガチっとはまったとき、初めてチームとしての力になる。そうやって「お互い支え合っているな」と感じられる瞬間を増やしていきたいですね。

これから挑戦したいこと

「ハマる」場所が必ずある。最強のものづくり集団へ

入社してから今日まで、現場に立ち続け、会社やチームを良くしようと奮闘できている原動力は、実はすごくシンプル。娘に「父ちゃんはすごいんだぞ」と胸を張れる自分でいたいんですよね。

正直、「リーダーや工場長になりたい」と思うタイプではありませんでした。今でも、なりたくて今の立場にいるわけじゃない。それでも、ものづくりが好きだという根っこの気持ちと、チームで良いものを作ってお客さんに喜んでもらうこと——この両方を追い求めてきた結果が、今の自分につながっています。

ここ数年、今まで積み重ねてきた実績や経験を踏まえると、結構すごいところまで来てるんじゃないかと感じます。「日本一の板金屋になれるんじゃないか」という内側からにじむ自信となっています。それは、職人の技術だけでなく、ものづくりに関わる製造部が大切にされてきたからだと思います。製造の声がちゃんと通る。職人の環境がちゃんと守られてきた。その積み重ねが、今の信用を作ってきた。

ただ、今の組織が完璧だとは思っていません。現場を回すことで精一杯になってしまう日も、正直まだあります。忙しさを理由に、チームの会議や社員教育が後回しになってしまうこともある。そこは自分たちの甘さだと痛感しています。

本当はもっと話したいし、もっと任せたい。でも現実は目の前の仕事に追われてしまう日もある。その繰り返しの中で、どうすればチームづくりと現場を両立できるのかを考え続けています。

だからこそ、これからの芝原工業には肩書きだけではなく、本当にチームをまとめ上げられるリーダーをもっと増やしていきたいです。正直なところ、自分自身もまだその途中です。どうすれば人が育つのか、どうすれば挑戦しやすい空気を作れるのか。答えを探しながら、まずは自分が動いてみるしかないと思っています。

——求職者へのメッセージ

没頭できる人に出会いたい

「何かに没頭できる」。そんな人に、ぜひ新しい仲間として来てほしいです。ものづくりじゃなくても良い。面白いと思ったことにハマって、楽しみながら極めていける人。こういう人は、自分で勝手に面白みを見つけて、どんどん成長していきます。

芝原工業は多品種少量で、ゼロから最後の仕上げまで、工程の幅が広い。その中に、すぐには分からなくても、やっていくうちに「あ、自分ここは面白いかもな」って思える場所は、どこかにあると思うんです。その場所を見つけ、とことん自分の可能性を広げていくのは、とても楽しいと思います。

自分もまだチームづくりや人づくりは試行錯誤の途中です。それでも、何かに夢中になれる人と一緒なら、もっと面白いものづくりができる気がしています。
スキルを極める面白さを味わいながら、チームでのものづくりを楽しんでいける。そんな仲間に出会いたいですね。